豆千代、逝く

2010年11月29日午前2時30分。
豆千代が逝きました。


異変に気付いてからたったの24時間。

2001年6月5日に生を受けてから、9年と5ヶ月。
長いようでとても短い時間でした。

うさぎのしっぽ東京店で初めて出会ったのはとっても寒い真冬。
お迎えした時のことを今でも鮮明に覚えています。
たくさん漫画に描いた豆との面白おかしい和む日々。
すべてノンフィクションの、笑えるかわいいうさぎ、豆。
いっぱい笑いを提供してくれた豆はたいへんいい仕事してました。
とてもよい家族でした。
亡くなった時、豆に心からこう言いました。
「お前は本当にいいうさぎだったよ」


豆の様子がおかしくなってから約24時間。
それでも頑張った24時間。
原因はおそらく“うっ滞”。
うさぎが高頻度に起こす症状で、
胃腸のどこかに内容物が詰まって閉塞してしまう病気です。

参考サイト：胃腸内容うっ滞　物言わぬ殺し屋

胃に水やガスが溜まり、パンパンに膨れ上がります。
発症して半日で命を落とす例も少なくありません。
あまりの激痛と飢餓状態でどんどん衰弱して死んでしまうのです。
9歳の老齢とあんなに小さな体で、どんなに苦しかっただろうか。
豆の最期は見ていてひどく辛かったです。
生きよう生きようと、最期まで必死に戦っていました。

その日はあいにくも日曜日で、
かかりつけのうさぎ専門病院も最寄の動物病院も休診。
休日診療の別の病院に連れて行くのは、移動のストレスを考えると避けたかった。
その時できることは、温めることと腹部マッサージ。
最期の数時間は起き上がる力も無くなっていた。
それでも起き上がりたくて、頭をうんうん数ミリ持ち上げてみたり
後方に投げ出した前足もつっぱってみては力なく滑っていく。
それでも頭や頬を撫でると、私の手に顔をすり寄せてくる姿がいじらしかった。
そんな状態なのに、豆ったら。
最後の力で何をしたか。
突然すごい力を出して跳ねようとして、跳ねられなくて、
もがいて転んで倒れ込んだ先は、ペットシーツの上。
ぜえぜえと体全体で息をしながら起き上がろうとしてもがく。
こんなに具合が悪いのに、豆ったら。
こんな時にまでトイレでおしっこをしようと！
（脱水状態なのでおしっこなんて出ないだろうけど…）
介助をしようとすると「自分でできるよ！」と言わんばかりに
私の手を振り払ってもがく。
よろけた先にお皿に入ったジュースが置いてあって（結局飲まなかった）
その中に片足がダイブ。
気まずそうな顔をする豆。
前にもこんなネタあったねと泣き笑いしながら豆の手を拭いてあげた。
抱いて介護マットに戻したところ、
またなぜかトイレに向かおうと飛び出したところで…
キュッと叫んでひっくり返ってしまった…。
慌てて抱きかかえる。
呼吸困難と見えて、口を大きく開けてぱくぱくと繰り返してもがく。
生きようとしている！
それに合わせて咄嗟に人工呼吸をする。
こんな時にも豆は私に、「うざい！」とでも言いたげに前足で私の頬を押しのけようとする。
口を離して様子を見る。
相当苦しいのだろう、すごい力でキックを繰り出す。
私は抱いたまま片腕で後ろ足と腰を押さえ込み、すっぽ抜けそうになるのを必死に堪えた。
こんなに苦しむなんてあんまりだ！
どうしてもっと安らかに逝かせてあげられないのか！
「豆ちゃん、ママいるからねここにいるからね」
豆はぱくぱくと繰り返す。体が痙攣している。
頑張れと思う一方で、もう頑張らなくていいよという思いでいっぱいになる。
豆の姿がつらくてつらくて…もういいよ頑張らないで！　と、強く思ったところで
豆の体がふっと軽くなった。
呼吸をしようとしていた口は開かなくなった。
震えていた体が静かになった。

午前2時30分。
豆千代は逝ってしまった。

最期まで生きようと諦めずに必死に戦った豆だった。
強い心を持った立派なうさぎだった。
負けず嫌いでおりこうな、豆千代らしい最期だった。


夜が明けると澄んだ快晴のきれいな空でした。
うさぎのしっぽのダンボールに豆の好きだった新しい牧草を敷き詰めて
乳酸菌とパパイヤのおやつも忘れずに添え、
きれいにブラッシングした豆をその上に寝かせて
慈恵院というお寺に連れて行きました。
ここには私のかつてのパートナーの鳥や、おばあちゃんの犬、
豆の息子のあずきが眠っています。
お寺の方が豆を見て、とても９歳には見えないと驚かれていました。
丸まって横たわった豆はとてもふわふわでとても可愛い姿でした。
お線香をあげて、ほっぺや身体にキスをして、最後のお別れを言って
11月30日午前８時頃、豆は火葬されました。
今朝、私は眠っていたのですがふと８時頃に目を覚ましました。
豆が火葬される時間だったのかもしれません。
今はお寺に預けたままですが、後日また迎えに行ってきます。


豆を愛してくれた皆さん本当にありがとう。
これから先も豆の漫画は描いていきたいです。
漫画の中で、私の胸で、
豆千代は生き続けていきます。